崖っぷちで出会った 最高の男性との最高のデート(ただし個人の感想です)
「まあ、後はそちらで話してくれ。私たちはそろそろ戻るよ。まだまだやることがあるから」
「ありがとうな紅林」
香坂と紅林が自分たちの用は済んだと言って、藤白家を出ようとした。
「あ、ありがとうございます」
二人に父たちと共に挨拶して見送った。
「あの、つまり…青海さんは弓弦とお知り合いで、我が家のことを知って今回骨を折っていだいたと…いうことですか?」
弓弦の父がおずおずとしながら口を挟み、「そうです」と悠が頷いた。
「弓弦、お前は一体東京で何をしていたんだ?」
高畠との結婚を前に羽を伸ばすのだと言って出ていった娘が、一体何をしたらこういう展開になったのかと思うのは当然だ。
弓弦自身、自分が悠と知り合った経緯は説明できても、今日のことやなぜ悠がここまでしてくれるのか不思議に思っていた。
朱音の運転する車に轢かれそうになり、申し訳なく思った朱音が悠の家に弓弦を連れていってくれたこと。詫びのつもりで遊びに連れて行ってくれたことを話した。
「本当にそれだけで? そんなくらいで、ここまでしていただいたの?」
「そうだ。それだけでここにいる人たちや、色々な人を巻き込んでまで、助けてくれるなんてあり得ない」
両親はその説明では納得できないと更に疑いを持っただけだ。
「でも、本当に・・そうなの」
一番知りたいのは弓弦だった。両親に話していないとは言え、確かに悠と体の関係は持った。
でも、ただそれだけ。弓弦に取っては初めての特別な一夜だったとしても、悠にとって初めての経験でもなければ、特別どころか彼の中ではきっと低ランクの経験だったはず。ここまでしてもらえるようなことではない。
それとも、悠は一度でも体の関係を持った相手には、とことん世話を焼くタイプなんだろうか。
「俺には金がある」
彼の口から出た言葉は思っていたのとは違った。
「俺がOUMIグループの御曹司で、自分でも会社を経営していると聞くと、本当に知り合いかどうかも怪しい奴らが、それこそ恥も外聞も無く、簡単にお金の無心に来る。もしくは女性なら、俺と結婚したいと言ってアプローチしてきたりする」
「年商一億の会社社長で、大学時代から起業して預貯金もかなりあって、独身でその顔だ。仕方ない」
九條が横からフォローなのかわからない相の手を入れる。
「それなのに、弓弦さんが俺に望んだのはたった一日のデート。費用は俺持ちだったとは言え、ただ俺とのデートを純粋に楽しんで、他には何も望まなかった。せっかく買った服も靴も、何もかも置いていくとは思わなかった」
弓弦は身につけた洋服をクリーニングしてから全て悠へ送りかえした。
手元に品物として残してしまえば、後で見ると辛くなるからだった。
「お金を貸してと言っても良かったのに」
「そんなこと、頼めません。これは私の事情であって、悠さんを巻き込むつもりはありません。それに、お金が絡んだ関係を、悠さんと結びたくは無かったんです」
お金で繋がった関係ではなく、打算のない恋人同士のように接したかった。
「この方、弓弦が望むならお金を貸してくれるつもりのように仰っているけど、家の事情をご存知だったの?」
「ええ。偶然高畠さんから電話が来て話を聞かれてしまったから、事情をお話したわ」
「まあ・・そんなことを会ったばかりの方に」
「何も悪いことをして作った借金でもありませんよね。それに、だからこそ弓弦さんはご両親を見捨てず、自分が犠牲になってもいいと思った。親孝行な娘さんだと思います」
「あ、ありがとうございます」
悠が弓弦を褒めると、両親は嬉しそうに笑った。久しぶりに見た両親の笑顔だった。
その笑顔を見せてくれたのは悠なのだ。
「でも、もう少し人に頼ることを憶えた方が良い。少なくとも俺は頼ってほしかった」
「頼れるわけないじゃありませんか。会ったばかりで・・そんなこと」
「そんなことをと言うが、それを平気でする人間もいるんだ。ちっとも努力せず、人に媚びて甘い汁を吸おうとする人間がね」
そんな方法もあったのかと初めて気づいた。けれど、それが何になるのか。少なくとも悠とそんな関係になりたくはなかった。
「そうだね。弓弦さんはそんなことを言える人じゃない。ほんの数日一緒にいてもわかった。だから俺はそんな君だから助けたかった。重荷をすべて取り払って自由にしてあげたかった。そしてその上で、俺と改めて向き合ってほしいと思った」
「だから、どうして・・」
「弓弦」
どうしてだと問いかけようとする弓弦に、母親が声を掛けた。
「青海さん、娘のことをそんな風に気に掛けて頂いてありがとうございます。このとおり素直で優しい、良い子なんです。でも、ちょっと抜けているといいますか、もし私の勘違いでないなら、もっとはっきり言ってやってください」
「ちょとお母さん、抜けているってひどい」
よりによって悠の前で親にディスられるとは思わなかった。
「本当にそうですね。そこもまた可愛いんですが」
「え、あの、可愛いって」
悠の方を見ると、優しい笑顔を向けて自分を見つめている。
「弓弦さん」
「は、はい」
「俺は、君が好きだ」
「ありがとうな紅林」
香坂と紅林が自分たちの用は済んだと言って、藤白家を出ようとした。
「あ、ありがとうございます」
二人に父たちと共に挨拶して見送った。
「あの、つまり…青海さんは弓弦とお知り合いで、我が家のことを知って今回骨を折っていだいたと…いうことですか?」
弓弦の父がおずおずとしながら口を挟み、「そうです」と悠が頷いた。
「弓弦、お前は一体東京で何をしていたんだ?」
高畠との結婚を前に羽を伸ばすのだと言って出ていった娘が、一体何をしたらこういう展開になったのかと思うのは当然だ。
弓弦自身、自分が悠と知り合った経緯は説明できても、今日のことやなぜ悠がここまでしてくれるのか不思議に思っていた。
朱音の運転する車に轢かれそうになり、申し訳なく思った朱音が悠の家に弓弦を連れていってくれたこと。詫びのつもりで遊びに連れて行ってくれたことを話した。
「本当にそれだけで? そんなくらいで、ここまでしていただいたの?」
「そうだ。それだけでここにいる人たちや、色々な人を巻き込んでまで、助けてくれるなんてあり得ない」
両親はその説明では納得できないと更に疑いを持っただけだ。
「でも、本当に・・そうなの」
一番知りたいのは弓弦だった。両親に話していないとは言え、確かに悠と体の関係は持った。
でも、ただそれだけ。弓弦に取っては初めての特別な一夜だったとしても、悠にとって初めての経験でもなければ、特別どころか彼の中ではきっと低ランクの経験だったはず。ここまでしてもらえるようなことではない。
それとも、悠は一度でも体の関係を持った相手には、とことん世話を焼くタイプなんだろうか。
「俺には金がある」
彼の口から出た言葉は思っていたのとは違った。
「俺がOUMIグループの御曹司で、自分でも会社を経営していると聞くと、本当に知り合いかどうかも怪しい奴らが、それこそ恥も外聞も無く、簡単にお金の無心に来る。もしくは女性なら、俺と結婚したいと言ってアプローチしてきたりする」
「年商一億の会社社長で、大学時代から起業して預貯金もかなりあって、独身でその顔だ。仕方ない」
九條が横からフォローなのかわからない相の手を入れる。
「それなのに、弓弦さんが俺に望んだのはたった一日のデート。費用は俺持ちだったとは言え、ただ俺とのデートを純粋に楽しんで、他には何も望まなかった。せっかく買った服も靴も、何もかも置いていくとは思わなかった」
弓弦は身につけた洋服をクリーニングしてから全て悠へ送りかえした。
手元に品物として残してしまえば、後で見ると辛くなるからだった。
「お金を貸してと言っても良かったのに」
「そんなこと、頼めません。これは私の事情であって、悠さんを巻き込むつもりはありません。それに、お金が絡んだ関係を、悠さんと結びたくは無かったんです」
お金で繋がった関係ではなく、打算のない恋人同士のように接したかった。
「この方、弓弦が望むならお金を貸してくれるつもりのように仰っているけど、家の事情をご存知だったの?」
「ええ。偶然高畠さんから電話が来て話を聞かれてしまったから、事情をお話したわ」
「まあ・・そんなことを会ったばかりの方に」
「何も悪いことをして作った借金でもありませんよね。それに、だからこそ弓弦さんはご両親を見捨てず、自分が犠牲になってもいいと思った。親孝行な娘さんだと思います」
「あ、ありがとうございます」
悠が弓弦を褒めると、両親は嬉しそうに笑った。久しぶりに見た両親の笑顔だった。
その笑顔を見せてくれたのは悠なのだ。
「でも、もう少し人に頼ることを憶えた方が良い。少なくとも俺は頼ってほしかった」
「頼れるわけないじゃありませんか。会ったばかりで・・そんなこと」
「そんなことをと言うが、それを平気でする人間もいるんだ。ちっとも努力せず、人に媚びて甘い汁を吸おうとする人間がね」
そんな方法もあったのかと初めて気づいた。けれど、それが何になるのか。少なくとも悠とそんな関係になりたくはなかった。
「そうだね。弓弦さんはそんなことを言える人じゃない。ほんの数日一緒にいてもわかった。だから俺はそんな君だから助けたかった。重荷をすべて取り払って自由にしてあげたかった。そしてその上で、俺と改めて向き合ってほしいと思った」
「だから、どうして・・」
「弓弦」
どうしてだと問いかけようとする弓弦に、母親が声を掛けた。
「青海さん、娘のことをそんな風に気に掛けて頂いてありがとうございます。このとおり素直で優しい、良い子なんです。でも、ちょっと抜けているといいますか、もし私の勘違いでないなら、もっとはっきり言ってやってください」
「ちょとお母さん、抜けているってひどい」
よりによって悠の前で親にディスられるとは思わなかった。
「本当にそうですね。そこもまた可愛いんですが」
「え、あの、可愛いって」
悠の方を見ると、優しい笑顔を向けて自分を見つめている。
「弓弦さん」
「は、はい」
「俺は、君が好きだ」