年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 睦月さんからコーヒーを受け取り、私はまた画面に向かう。
 今日の仕事の相手です、とは言えず悩んでいると、睦月さんのほうから私に尋ねてきた。

「ミッシェルって、日本じゃ結構話題になってたんだってね? アメリカじゃそこまでじゃなかったんだけど、たまたま映画見たんだ」
「……そうなんですね。日本じゃ無名の日本人女優がハリウッドデビュー、なんて話題になりましたよ? 私はDVDで見ました」

 そんな話をしながらも、私は"誰"と映画を見に行ったのかな……なんて、つまらないことを考えてしまい、俯くようにカップに視線を落とした。

 こんなこと、考え出したらキリがないのはわかってる。睦月さんだって、今までお付き合いをした人がいるんだから、そんなデートくらい何度もしてきたに違いない。

 ついつい、はぁ~っと大きく溜め息を吐き出してしまう。今はこれからの仕事に集中しなきゃいけないのに。

「……ちゃん。さっちゃん? 大丈夫?」

 顔を上げると、睦月さんは心配そうに私のことを覗き込んでいた。

「え? あ……大丈夫です……」

 そう答えると、睦月さんは安心したように表情を緩め続けた。

「今日仕事するの、この子なんだってね」
「知ってたんですか?」
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