年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 私が驚いてその顔を見ると、睦月さんは少し申し訳なさそうな顔を見せた。

「昨日、それとなく司に聞いたらアッサリ教えてくれた。もっと前に知ってたら違うアドバイスもできたのに、ごめんね」
「そんなっ! 睦月さんだからこそ知れたわけなんで。それに、自分の仕事だから……」

 こっちこそ気を使わせて申し訳ない気持ちになる。睦月さんが謝る必要ないのに。

「さすが。さっちゃんは偉いなぁ」

 頭をそっと撫でられ、また私の心臓は早鐘を打つ。私の顔は真っ赤なんじゃないかってくらい顔が熱い。

「ミッシェルってさ、俺の母親に何となく似てるんだよね」

 手を下ろしてから睦月さんは何となく懐かしそうに言う。

「お母様に?」
「うん。映画見終わってから弟とそんな話になったんだよね。母に似てるなって」

 映画……弟さんと見たんだ……

 そんなことすら嬉しくなってしまう。睦月さんは、そんな私の心の内など露知らず続けた。

「俺の母親、もう随分前に亡くなってさ。記憶にあるのは病院か家のベッドの上で。だから、父が昔撮った元気な頃の写真が一番印象深いんだよね」

 いつものように、目尻に笑いじわを浮かべて睦月さんは私にそう言った。

「そう……だったんですか……」

 私はなんて言っていいかわからず、ただそれだけを口にするしかなかった。
< 149 / 611 >

この作品をシェア

pagetop