年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 明るく笑顔でそう言うと、司は整った顔の眉間に皺を刻んで「はぁ?」と口に出す。

「司が触ったら、俺の大事な友達が司の匂いに変わりそうだし」

 不機嫌さを露わにしようが別に構うことなく、そのまま俺は軽い調子で続けると、司はより顔を顰めて手を下ろした。

「お前、どっかで頭でも打ったのかよ?」

 そう言いながら司はコーヒーを啜る。

「うーん……そうだね。そうかもね」

 言われてみればさっちゃんのことばかり考えてる時点で、そのくらいの衝撃なのかもなぁなんて思いながらそう答える。

「どうせどっかの女に貰ったとかだろ?」

 さすがに付き合いが長いだけあって、司は遠慮なしにそう言った。

「ちゃんと自分で買いました!知ってる? それ、海にあるテーマパーク限定なんだよ?」
「興味ねーよ。つうか、お前が一人でそんなところ行くわけねーよな?」

 ほくそ笑むような表情を見せて、司は俺にそう言う。

 そっちには興味ありそうだね、とその顔を見ながら思うけど、今は言いたくない。

「ま、さすがにね。それはいいんだけど、俺の仕事のお悩み相談には乗ってくれないの?」

 カップのコーヒーを飲み干すと、俺は司を促すように立ち上がる。

「へいへい。お聞きしますよ。どれだよ?」

 そう言って、司は面倒くさそうに立ち上がった。
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