年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 お互い仕事の、と言うより写真の話になると熱が入り、気づけば2時間以上あれやこれやと話をしていた。

 俺はパソコンの前から立ち上がると、「さすがに疲れたぁ!」と大きく伸びをした。

「もうこんな時間か。そろそろ帰らねぇとな」

 司も、もう6時になろうとしている時計を見て立ち上がる。

「帰ったら瑤子ちゃんがご飯作ってくれてるの?」

 空になった2つのカップを手に俺は司に尋ねた。

「あー……たぶん。アイツも仕事してたし、まだかも知んねーけど、別に構わねぇしな」
「いいなぁ。待ってる人がいるって。俺、食べるもの何も無いから今から買い物だよ? 面倒だなぁ……」

 そう言いながらも、俺は今まで彼女と一緒に暮らした事はない。早く結婚したいなんて口では言いながら、家族以外の誰かと暮らす想像なんてした事なかった。

 それは司だって同じだったはずなんだけど。
 一緒に暮らすどころか、誰かと一緒に朝まで過ごす事もなかった司が、今では当たり前に、帰れば彼女がいる生活を受け入れているんだからなぁ……なんて、帰る用意をする司を眺めた。

「そういえば、ちょっと小耳に挟んだんだけどさ」

 キッチンへカップを置きに向かいながら、あくまでもさりげなく俺は続ける。

「何か今週、夕方の仕事入ってるんだって?」
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