年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「祖母ちゃんな、ひ孫の顔が見られたら思い残すことないって言ってたんだ。まだ若かったしな。いつか見せてやれるだろう、なんて思ってた。でも、実際に残された時間はもうほとんどなかった。だから俺は、美紀子に結婚して子ども産んでくれ、なんて無茶なことを言いに行った。俺達はただの幼馴染だったはずなのに、その時浮かんだのは美紀子だけだったからな」

 今までさっちゃんから聞いていた2人の話。とても仲睦まじく、きっと大恋愛の末結ばれたんだろう、なんて勝手に想像していた。でも、人にはそれぞれに物語がある。そして、それが自分の想像を超えていた。それだけだ。
なんてことを思いながら、俺はただ静かに、さざなみのように語る学さんの話を聞いていた。

「その時の俺は、美紀子のことをどう思っていたのか、自覚なんかしてなかった。中学のころは帰ればうちにいて、祖母ちゃんと飯作って待っててくれてな。家族って、こんな感じなんだなって、ただそれだけだった。だからなんだろうな。俺は美紀子のことを好きだと思う前に、家族になりたいって思っちまった。……浅はかだろ?」

 学さんはそう言って最後に、自虐的な様子で呟いていた。
< 540 / 611 >

この作品をシェア

pagetop