年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 希海さんは少し考える様子を見せしばらく黙っていた。そして顔を上げると、「伝手は……ある」と答えた。

「そこってもしかして?」

 香緒ちゃんが希海さんにそう言うと、希海さんは少し顔を顰めて「もしかしなくてもあそこだ」と返した。

「って、いったいどこ?」

 さすがに私も睦月さんも思い当たらず、睦月さんは尋ねた。そして、それに希海さんが答えると、「あぁ!」と納得したように睦月さんが声を上げた。
 その、伝えられた高級ホテルは名前は知っていたが足を踏み入れたことはない。それにしても、そんなところに伝手があるなんて……と思っていると、一人ポカンとしていた私のほうに睦月さんは向いた。

「去年、こっち戻って来たときに司がいっとき住んでたんだよね。昔から使ってたから多少融通きく、なんて言ってたけど」
「あのホテルは、長門の家が昔から懇意にしてるところで、母に尋ねればチャペルの空きくらい簡単に調べられるはずです」

 希海さんが睦月さんにそう言うと、その隣で香緒ちゃんはそれに続いた。

「あのさ、それで僕から提案したいんだけど」

 ニコニコしながら言う香緒ちゃんに、たぶんみんな何となく何を言い出すのか予想できたはずだ。長門さんと瑤子さんと知り合ってそう経っていない私にだって、思い浮かんだのだから。
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