年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 希海に連れられ、いくつかあるテーブルの一つに案内される。

「俺の祖父母と、こちらが瑤子さんのご両親です」

 希海の祖父母と言うことは、もちろん司のご両親なわけで、昔から家との確執を聞かされていた俺に緊張が走った。

「初めまして。岡田睦月と申します。本日はおめでとうございます」
「綿貫咲月と申します。おめでとうございます」

 そう言って俺達が挨拶を述べると、皆がその場で一斉に立ち上がった。

「今日は愚息のためにこのような場を設けてくださったこと、感謝します」

 着物姿が板についている男性がそう言うとお辞儀をする。確かに、気難しそうには見えるが、司に聞いていたほどではなさそうだ。

「とんでもない。今の俺があるのは司のおかげです。これくらいさせて下さい」

 そう笑みを浮かべて返すと、品のいい留袖姿の女性が俺のほうを向いた。

「貴方が一緒にニューヨークまで行ってくださった……。娘からいいご友人だと伺っております。これからもどうかよろしくお願いします」

 そう言って頭を下げるその人を見ながら、俺は温かい気持ちになった。司はちゃんと両親に愛されてるんだって、俺にはそう思えたから。

 そのあとは、ものすごく緊張している瑤子ちゃんのお父さんと、「瑤子の結婚式に参列できるなんて思ってなかったわ!」と明るく笑い飛ばすお母さんに挨拶をして、そのテーブルを離れた。
< 571 / 611 >

この作品をシェア

pagetop