馬鹿は死んでも治らない?知ってるわ!!

牢屋にて




馬鹿は死んでも治らない。


あぁ、まさに今のわたしに当てはまる言葉だわ、と思わず乾いた笑いが溢れた。




わたしは今、王宮の暗い牢屋の中で舞踏会に参加したときのそこそこいいドレスと宝飾品をつけたまま床の上に座っていた。もちろんと言っていいのかクソ重い手錠付きで。


普通の令嬢だったらこんなところにいるだけで心が弱るし床の上に座るなんて不潔!と泣き叫びそうだ。しかも剥き出しの石畳だし、お世辞にも清潔な環境とは言えない。蜘蛛の巣がある時点でお察しである。まぁ今のわたしならなんとも思わないけど。


はぁ、と思わず出たため息と一緒に手錠の鎖が音を立てる。石畳も金属も体温を奪っていくので地味に寒い。しかもわたしドレス姿だし。せめて毛布か何か一緒に放り込んで欲しかったわ。


わたし…わたくし、アエナ・ユール・セズレイはセズレイ伯爵家の長女として生まれた。恐らくはごくごく普通の令嬢だったわたくしが普通とは言えなくなったきっかけはこの国の王族との婚約が決まったときだっただろう。


第二王子であるセドリック・ロア・エイス殿下はこのエイス王国の第二王子だ。第二妃の産んだ王子であり、まぁぶっちゃけて言うと正妃の産んだ第一王子が王太子に付く障害とならないためにと考えられた結果の政略結婚。


別に高位貴族の令嬢として生まれて育てられたから政略結婚云々に関しては覚悟もしてたし駄々をこねるつもりもない。だからといって王子妃教育として王城に上がる度にネチネチネチネチと愚痴を垂れ流されながらいびられればうんざりもするというものである。




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