馬鹿は死んでも治らない?知ってるわ!!
それでも相手はこの国で最も尊い人たちで、せいぜい伯爵家の娘如きが口ごたえできるわけもなく、内心はどうであれ淑女の笑みを湛えて今まで耐えてきたのに。のに!!!
「よりによってあんな社交の場で婚約破棄って……」
大きなため息を吐いても注意する人がいないので盛大に吐き出した。普段だったら大目玉だっただろうけどここにいるのは虫、よくて鼠ぐらいである。
まぁ婚約破棄のショックのせいで前世の記憶を思い出したからか、心的なダメージはないのが救いだ。じゃないときっとわたくしの心はボロボロになっていただろう。
なんか前世でこういうのってよく見た気がするわ。なんて言ったっけ……乙女ゲーム転生?テンプレ?でもこういうのって幼少期に思い出すものじゃない?いや、この世界が本当に乙女ゲームかどうかすらわからないんだけどね。
何せ前世、乙女ゲームとは縁のない生活をしていたもので。妹は二次元に生きていたけど、わたしはリアルの恋愛ばかりしていたからなぁ……まぁ結婚はしていなかったけどね。
何を隠そう前世のわたし、とことん男運がなかった。学生時代、初めて付き合った人は処女好きの変態、次に付き合った奴は束縛メンヘラ野郎、その他六股されたり実は既婚者の火遊び相手だったりとそれはもう歴代彼氏はクズのよりどりみどりというやつである。
男運もそうだけど、わたしの目が見る目がなかったということなんだよね…流さやすかったというか、付き合ってほしいと言われたら頷いてしまうというか。
今ならわかる。前世のわたしは馬鹿だった。そして今世でもわたしは馬鹿だった。