お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 アイリーンが階段を下りていくと、コンシェルジュが驚いたようにアイリーンを見上げ、直ぐに走り寄って荷物を受け取ってくれた。
「馬車をお願いします。港まで」
「かしこまりました」
 コンシェルジュは、正面玄関から出て行くと、直ぐに流しの馬車を止めて戻ってきた。
「ありがとう」
 残っている銅貨を十枚ほどチップとして手渡した。
 コンシェルジュは、見慣れないデロスの銅貨を珍しそうに見つめた。
 御者に、貨物船の繋留場所で大海の北斗七星号を探してくれと頼むと、御者は直ぐに馬車を走らせた。

 早朝の街に人は少なく、道はガラガラだった。夜遅くまでパーティー三昧の貴族は、まだ当分夢の中だ。
 港が近付くと、今日出航する船もあるのだろう、人々が走り回る姿が見られた。
 沢山繋留されている船の中から、大海の北斗七星号を探すのはそれなりに一苦労だった。
 本当なら繋留場所の識別番号を記憶しておけばすぐに分かったのだが、アイリーンは知らなかったので、なかなか見つからない船に焦りながら、エクソシアの皇帝御用達の船であることを説明した。
「何だ、じゃあ、こっちじゃねぇ」
 一時間近く、港をぐるぐると巡っていた馬車が、御用達の船が繋留される専用の繋留エリアに入ると、すぐに目的の船は見つかった。
 アイリーンは丁寧にお礼を言うと、延々探すのに時間がかかったこともあり、ポケットの中にあった銅貨を掴めるだけ掴んで御者に手渡した。
「お嬢さん、こんなにいいのかい?」
 御者は驚いたようにアイリーンを見つめた。
「ありがとうございます」
 お礼を言うと、アイリーンは荷物を片手に船への階段を上がり始めた。
 密航者が船に乗らないように階段の上がり口には交代で見張りが着くことになっているが、アイリーンの姿を見るとすぐに通してくれた。
 アイリーンはポケットから鍵を取り出し、一等航海士の居室のドアーを開けると、中に入り鍵をしめた。
 ベッドから枕を取ってくると、アイリーンはカウチに横になった。
 長く眠る癖がついてしまったからか、いつもなら、すぐに仕事を始められるのに、アイリーンは横になると、再び眠りに落ちていった。

☆☆☆

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