お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
 しかし、アイリーンの体はしっかりとカルヴァドスに抱きしめられ、逃げられる状態になかった。
 ゆっくりと、カルヴァドスは顔を寄せると、アイリーンの額にキスを落とした。
 てっきり、唇にキスされると思っていたアイリーンは、体を硬くしていが、優しく額に落とされたキスに緊張がほぐれていった。
「さっきも言っただろ。レディが嫌がることはしないって。レディが、俺と心からキスしたいって思ってくれるくらい俺のことを好きになってくれたら、その時は、遠慮せずにそのさくらんぼみたいに可愛い唇を戴くよ。でも、そうでない限り、俺は、額と頬で我慢する」
「ありがとうございます、カルヴァドスさん」
「こう言うのは、惚れた弱みって言うんだよ。じゃあ、俺はもう一杯飲んでくるから、レディは先に寝てな。俺が居ると、着替えとかしにくいだろ? あ、レディは窓側な? 俺はドアー側に寝るから。万が一、大の字に寝てたら、抱き枕代わりに抱きしめて寝るから、朝になって怒らないでくれよ」
 カルヴァドスは言うと、空になった器の乗ったトレイを以て部屋から出ていった。
 残ったグラスの赤ワインを飲み干すと、アイリーンは寝間着に着替えてベッドに入った。
 明日から、船の上でどんな生活が待っているのか分からないことばかりだったが、ただ一つ、カルヴァドスの事だけは信頼できるとアイリーンは確信していた。
「おやすみなさい、アイジー、ラフディー。それに、ローズとアルフ。お兄様、お父様。明日、私はデロスを旅立ちます」
 アイリーンは声に対して言うと。海の女神への祈りを捧げてから横になった。

☆☆☆

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