エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「そうか。遥香ちゃん、いよいよ退院だもんね。うれしい反面寂しいよ。あ、医師がこんなことを言っちゃダメだよね」
肩をすくめ苦笑する笹原に珠希も笑い声を漏らす。
「遥香ちゃんもきっと寂しいと思いますよ。笹原先生は、優しいですから。祖父も笹原先生が病室を覗いてくださると、いつもうれしそうにしていました」
珠希の祖父はゴルフが唯一の趣味で、入院中も週末のゴルフ中継を楽しみにしていた。同じくゴルフ歴が長い笹原と、ゴルフ談義に花を咲かせることも多かった。
病状が進行して一日の大半を眠り続けていたときにも、笹原はテレビから流れるゴルフ中継の実況を、祖父に聞かせていた。
そのときの祖父の寝顔は穏やかで、笑っているように見えることもあった。
夢の中でクラブを手にし、グリーンに流れる心地よい風を満喫しているかもしれないと、笹原と笑い合ったことを思い出す。
「あれから五年か。五年経っても、僕は相変わらず魔法使いにはなれないままだな」
「あ……それは」
今の言葉は、五年前に珠希が口にした言葉だ。
ここ最近思い出す機会は減っていたが、聞けば今も、胸に迫るものがある。
珠希や珠希の家族に頭を下げ、自身の力のなさを詫びていた笹原の姿も思い出した。
「すべての病気を治せる魔法使いになりたくて精進してるけど、なかなか難しいな」
言葉の裏にある真意を察し、珠希は小さく首を横に振る。
笹原が抱えるもどかしさを、珠希の父や拓真も同じように抱えているはずなのだ。
どれほど医療が発達しても、そして新薬の開発に多大な費用を投じても、助けられない命がある。
祖父が亡くなったときに思い知らされた現実は、今もまだ変わっていないようだ。
「まあ、僕に負けず劣らずの意気込みで魔法使いを目指して奮闘中の宗崎に、未来を託すよ」
人好きのする笹原の明るい声につられ、珠希も笑顔を返す。
「碧さんなら、素敵な魔法使いになりそうですね」
肩をすくめ苦笑する笹原に珠希も笑い声を漏らす。
「遥香ちゃんもきっと寂しいと思いますよ。笹原先生は、優しいですから。祖父も笹原先生が病室を覗いてくださると、いつもうれしそうにしていました」
珠希の祖父はゴルフが唯一の趣味で、入院中も週末のゴルフ中継を楽しみにしていた。同じくゴルフ歴が長い笹原と、ゴルフ談義に花を咲かせることも多かった。
病状が進行して一日の大半を眠り続けていたときにも、笹原はテレビから流れるゴルフ中継の実況を、祖父に聞かせていた。
そのときの祖父の寝顔は穏やかで、笑っているように見えることもあった。
夢の中でクラブを手にし、グリーンに流れる心地よい風を満喫しているかもしれないと、笹原と笑い合ったことを思い出す。
「あれから五年か。五年経っても、僕は相変わらず魔法使いにはなれないままだな」
「あ……それは」
今の言葉は、五年前に珠希が口にした言葉だ。
ここ最近思い出す機会は減っていたが、聞けば今も、胸に迫るものがある。
珠希や珠希の家族に頭を下げ、自身の力のなさを詫びていた笹原の姿も思い出した。
「すべての病気を治せる魔法使いになりたくて精進してるけど、なかなか難しいな」
言葉の裏にある真意を察し、珠希は小さく首を横に振る。
笹原が抱えるもどかしさを、珠希の父や拓真も同じように抱えているはずなのだ。
どれほど医療が発達しても、そして新薬の開発に多大な費用を投じても、助けられない命がある。
祖父が亡くなったときに思い知らされた現実は、今もまだ変わっていないようだ。
「まあ、僕に負けず劣らずの意気込みで魔法使いを目指して奮闘中の宗崎に、未来を託すよ」
人好きのする笹原の明るい声につられ、珠希も笑顔を返す。
「碧さんなら、素敵な魔法使いになりそうですね」