エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「こっちはパワーアップどころの話じゃない。行動力がありすぎて、背中に蓄電池が見えるような気がする。今のペースじゃ当日息切れするぞって注意したら、だったら白石ホテルのスウィートでマッサージしてもらってゆっくりするから大丈夫とか言ってるし。あの脳天気なところ、どこかにネジをいくつか落としてるはずだって、本気で思う」

碧は珠希の肩を抱き、うんざりしたようにため息を吐きだした。

「白石ホテルのスウィートですか。それはかなり魅力的ですね」
「なんだよ、珠希もか? だったらそのうち泊まりにいくか。俺もスウィートには泊まったことがないから、実は気になってるんだ」

珠希はうんうんとうなずき、目を輝かせる。

「それにしてもあのふたり、楽しみすぎだ。俺たちの結婚式だってわかってるのかな」

呆れた声でつぶやきながら、碧はこめかみを指先でほぐしている。仕事で忙しいうえに、最近ではふたりの結婚式と披露宴を取り仕切る両家の母親たちに振り回されているようだ。
珠希は最近聞かされたのだが、珠希と碧が正式に結婚を決める以前から、両家の親たちは結婚式に向けて積極的に動いていたらしい。
とくに母親たちは、見合い当日珠希と碧が料亭を後にした直後、白石ホテルに足を運んで来年六月の挙式と披露宴を予約してしまったそうだ。
今となれば笑い話のひとつとして話せるが、もしも見合いがうまくいかなかったらどうするつもりだったのかと、碧はひどくご立腹だったと聞いている。
『うまくいかないのなら、それはあなたに魅力がないからでしょう? 仕事一辺倒で面白みに欠ける自分を反省しなさい』
平然と言い返した碧の母は、それからもペースを落とすことなく結婚式の準備に力を注いでいる。
そこに珠希の母が加わって、主役である珠希と碧のことなどそっちのけでことは進んでいるのだ。
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