エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「だとしても、この家に閉じ込められたくなかったら、ちゃんとつけてろ。もしも外で男に声をかけられるようなことがあったら、珠希が誰のものなのかをこの指輪を見せて言っておけ」

碧は声を荒げ、吐き捨てるように言い捨てる。

「碧さん……」

それからしばらくの間、顔を真っ赤にしている碧を、珠希はぽかんと見上げていた。




入浴と食事を済ませたふたりは、早々に寝室に引き上げた。
そろってベッドに入り、ヘッドレストに身体を預けてタブレットを覗き込んでいる。

「悪いな。当日の衣装だけは早めに決めろってあのふたりがうるさいんだ」

目当ての画面を呼び出した碧からタブレットを受け取り、珠希は軽く首を横に振る。
〝あのふたり〟とは珠希と碧の母親のことだ。見合いの日に初めて顔を合わせて以来、ふたりは驚くほど強い結束を固めて結婚式の準備に奔走している。
結婚式と披露宴に関しては基本的に両家の親たちに任せているが、本人たちにしか決められないこともあるので、そのたび連絡が入るのだ。
今日も夕食のあと、碧の母から衣装合わせの日程が迫っているのでおおまかな希望を教えてほしいと連絡があった。

「衣装だけでいいんですか? 結婚式まで半年しかないのに打ち合わせもなにもしていないって同僚に話すと、かなり驚かれました」
「あー、それな。まあ、おいおい打ち合わせに参加することになると思うけど。今はとりあえず衣装らしい」

碧はなにか思うところでもあるのか、気乗りしない様子でため息をついている。
ここ最近結婚式の話になると、碧は決まってこの表情を見せる。
珠希はその理由にピンときて、軽く肩をすくめた。

「おかあさま、相変わらずですか? ちなみに、うちの母はさらにパワーアップしてますよ」

面白がるような珠希の軽い声に珠希はがっくりと肩を落とす。
今日の落ち込み具合は普段以上だ。
< 124 / 179 >

この作品をシェア

pagetop