エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
【患者の容態が気になるから今日は帰れそうにない】
【正月はどうするんだ? 珠希が家を出てから父さんたち寂しそうだぞ。見合いをさせたことを、今頃になって後悔してるみたいだな】
志紀との食事を終えて自宅に向かう電車の中で、碧と拓真から一通ずつ、ほぼ同時にメッセージが届いた。
結局、大宮はあのあと怒りそのままに立ち去ってしまい、その場に取り残された珠希たちは、しばし呆然としていた。
珠希の見合いなど関係もない志紀にしてみれば、もらい事故のような展開だ。
珠希はお詫びも兼ねてと強引に誘い、志紀の恋人が働いているレストランに連れて行った。
幸いにも突然のキャンセルがありテーブル席に空きがあったことからすぐに食事にありつけ、ふたりは存分においしい料理を堪能した。
久しぶりに恋人の顔が見られて幸せそうな志紀の笑顔も堪能し、珠希の心は温かくなった。
そして帰宅途中の電車の中で早く碧に会いたいと思っていた矢先に届いたのが、ふたつのメッセージだった。
【お疲れ様。無理しないでくださいね。合間にちゃんと食べてください】
【そのお見合いの件で、聞きたいことがあるから今から行きます】
珠希はそれぞれに返事を送ったあと、拓真の家に向かった。
碧のマンションと同じ沿線にある拓真の家は、閑静な住宅地にある二階建てのマンション。
今月入居したばかりの新築で、碧のマンション同様セキュリティ対策が万全の、高級物件だ。
「で、突然どうしたんだよ。碧さんは? 今日も宿直か?」
リビングに通されラグの上に腰を下ろした早々、珠希は拓真に問いかけられた。
「うん、碧さんは患者さんが気になるから帰れないって。あ、突然ごめんね。家に帰ってもひとりだし、妙なことを聞いて気になったから」
珠希はひとまずそう言って、温かいお茶を用意してくれた麻耶に笑顔を向けた。
いつもふんわりとした優しい笑顔の麻耶は、和合製薬の研究所で働いている。