エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
それどころか担当者や司会者との顔合わせを終えたことで、日々治療に励む患者たちが楽しめるようなクリスマスにしようと、気合いも入る。

「え?」

病院の敷地を出てすぐ、珠希は目の前の交差点を渡った先にかわいらしいレストランがあるのに気づいた。
レンガ造りの外観が目を引くその店は、五年前に白石病院に通っていたときにはなかったはずだ。
今日病院に駆けつけたときには約束の時間が迫り焦っていて、気づかなかった。
珠希は信号が青に変わるのを待ちながら、興味深げに眺めた。
そしてふと振り返り、白石病院を見上げる。
国内屈指の大病院というだけあって、敷地面積は広く複数ある病棟はどれも大きく立派だ。三年ほど前に改装を終えた外観はとても綺麗で、優しいベージュ色に統一され温かい雰囲気を漂わせている。
五年前には平面駐車場だった場所はその面影をすっかり消して公園に変わり、近所の人たちの憩いの場になっている。

「おじいちゃん……」

珠希の口から、切ない声が漏れた。
改装を経てすっかり様変わりした白石病院を見ても、胸は痛まない。
珠希はしばらくぶりに訪れた白石病院の変化に、改めて安堵の息を吐く。
五年前に珠希の祖父が白石病院で亡くなり、当時の悲しみを思い出すのがつらくて今日もここに来るまで不安だったのだ。
珠希が大学生だったある日、祖父は頭痛と吐き気で倒れて救急車で白石病院に運ばれた。
進行が速い悪性腫瘍のようだと診断され早々に手術が行われた。
病理診断の結果は、脳の表面ではなく内側に発生した腫瘍が、脳の中央にしみ込むように広がっていく悪性度4の脳腫瘍だった。
白石病院の脳神経外科の顔ともいえる笹原医師と数人の医師が、検査結果や術後の画像を両親に見せながら説明するのを、珠希は呆然と聞いていた。


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