エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「あんな冗談を言って大丈夫ですか? 皆さん真に受けて大喜びしてましたけど」

誤解を解こうにも、彼女たちはすでに店をあとにしていて訂正もできない。
あのはしゃいだ様子から考えると、碧の爆弾発言はすぐに病棟内に広まりそうだ。

「病院でからかわれますよ。からかわれるにしても、紗雪さんでしたよね、彼女のような綺麗な女性の方がよかったですね。すみません」

碧と自分ではつり合わない。
並んでサマになるのは断然紗雪の方だと、珠希は肩を落とした。

「謝るのは俺の方だろ」
「え、でも」
「さっきのご家族のことも紗雪のことも、気にしなくていいから」
「は、はい」

思わず声が裏返る。

「いや、責めてるわけじゃない。食事の後で説明しようと思っていたんだ」

しゅんとする珠希を、碧が慌ててなだめる。

「いえ、大丈夫です。私が立ち入る話じゃないので、説明はいりません」

 自分は単なる見合い相手だ。個人的な話を聞く権利はないとわかっている。

「立ち入ってくれてかまわない」

碧はテーブル越しに身を寄せて、珠希を真っすぐ見つめた。

「彼女、紗雪とのことだけど。少し説明していいかな」

珠希はこくりとうなずいた。



如月紗雪。碧と同じ大学の経済学部に通っていた彼女は、当時から海外のハイブランドのモデルとして活動するほど美しく、大学の内外問わず男性からの人気はかなりのものだった。
経済学部に碧の友人がいたことから彼女と知り合い、そこから広がった仲間達とともに付き合いが続いたそうだ。
碧の出身大学は難関大学として知られていて、看板学部である医学部だけでなく経済学部の人気も高く、倍率は毎年十倍超えだ。
それを突破した紗雪は見た目だけでなく成績も優秀で、四年間の学費が免除される特待生だった。

「学費免除って、よっぽど優秀なんですね」

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