エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
たしかにそうかもしれないと、珠希は納得する。卒業試験も控えて相当ハードだったはずだ。
「彼女が海外赴任を希望しているのは知っていたから、遠距離前提での付き合いも考えられないし、その場で断った」
「そうだったんですか……」
完璧を具現化したような紗雪を拒む男性がいることに、珠希は驚いた。
「でも、紗雪さんは今も宗崎さんのことが好きなんじゃないですか……あ、すみません」
店の前で碧と偶然再会した紗雪は、碧と話がしたいと繰り返していた。
この五年間音信不通だったとしても、再会した途端、過去に捨てたはずの恋心がよみがえったのかもしれない。
そんな珠希の考えを、碧は一蹴する。
「それはないな。付き合いを断った後食い下がられたけど、会えば気を持たせることになるし、こっちも忙しいから連絡がきても無視するようにしてた。彼女のカナダ赴任が決まって仲間内で開いた送別会で会うまで、彼女を思い出すこともなかった」
珠希は軽くうなずいて理解を伝える。
「それから五年、一度も連絡を取り合わなかったのに、彼女が今も俺を想ってるとは思えない。それでも会いたいって言い出したのは、彼女のプライドかな。昔振られたことは気にしてないって伝えたいだけだと思う。それが面倒で、さっきはつい素っ気ない態度を取ったかもしれないな」
碧はそこで言葉を区切り、表情を引き締めた。
「紗雪とふたりで会うつもりはないから。彼女のことはこれ以上気にしなくていい」
「わかりました」
ほんの少し、後ろめたい。そして紗雪と会わないと告げられて安堵する自分が情けない。
おまけに珠希の誤解を解こうと躍起になっている碧につい期待してしまいそうで、そのたび自分は単なる見合い相手なのだと、珠希は自分に言い聞かせる。
「ほかに会いたい女性がいるわけでもないから、そっちも誤解しないでほしい」
「彼女が海外赴任を希望しているのは知っていたから、遠距離前提での付き合いも考えられないし、その場で断った」
「そうだったんですか……」
完璧を具現化したような紗雪を拒む男性がいることに、珠希は驚いた。
「でも、紗雪さんは今も宗崎さんのことが好きなんじゃないですか……あ、すみません」
店の前で碧と偶然再会した紗雪は、碧と話がしたいと繰り返していた。
この五年間音信不通だったとしても、再会した途端、過去に捨てたはずの恋心がよみがえったのかもしれない。
そんな珠希の考えを、碧は一蹴する。
「それはないな。付き合いを断った後食い下がられたけど、会えば気を持たせることになるし、こっちも忙しいから連絡がきても無視するようにしてた。彼女のカナダ赴任が決まって仲間内で開いた送別会で会うまで、彼女を思い出すこともなかった」
珠希は軽くうなずいて理解を伝える。
「それから五年、一度も連絡を取り合わなかったのに、彼女が今も俺を想ってるとは思えない。それでも会いたいって言い出したのは、彼女のプライドかな。昔振られたことは気にしてないって伝えたいだけだと思う。それが面倒で、さっきはつい素っ気ない態度を取ったかもしれないな」
碧はそこで言葉を区切り、表情を引き締めた。
「紗雪とふたりで会うつもりはないから。彼女のことはこれ以上気にしなくていい」
「わかりました」
ほんの少し、後ろめたい。そして紗雪と会わないと告げられて安堵する自分が情けない。
おまけに珠希の誤解を解こうと躍起になっている碧につい期待してしまいそうで、そのたび自分は単なる見合い相手なのだと、珠希は自分に言い聞かせる。
「ほかに会いたい女性がいるわけでもないから、そっちも誤解しないでほしい」