エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
それまで向かいのソファに腰かけふたりのやりとりを眺めていた珠希の父が、母をたしなめた。
「ふたりの結婚を喜ぶのはわかるが、珠希を見てみろ、顔が真っ赤だぞ。これ以上からかうと料理どころか家にも呼んでもらえないぞ」
「あら、それは困るわ。碧さんが今住んでいるマンションに大好きな俳優さんが住んでるそうなの。偶然に会えないかなって楽しみにしてるのに」
珠希の母は拗ねた口ぶりでそう言って、唇を尖らせる。
「俳優って……いつの間にそんな情報を手に入れたの?」
母の口から碧に関する情報が次々と飛び出し、珠希は目を丸くする。
料理上手なことも、有名俳優が住んでいるようなマンションで暮らしていることも、自分は聞いていない。
今日を限りに会うことはないだろうと考えプライベートに関して踏み込んだ話をしなかったから当然だ。
「ふふっ。碧さんのご両親って、話しやすくていい方達ね。早速連絡先を交換したのよ」
見合いの席で両親たちは当人そっちのけで打ち解けていた。そのときに碧のことが話題にのぼったのだろう。
「碧さんのお母さまもね、看護師として今も現役でバリバリ働いていらっしゃるのよ。仕事を持つ者同士、話が合ったの。親戚づきあいも問題なさそうだし、ホッとしたわ」
「親戚づきあいって、そんな心配は必要ないから――」
「珠希は人見知りしがちだけど、あのお母様なら大丈夫。きっとかわいがってくれるから嫁姑問題の心配は無用よ」
「ちょ、ちょっと待って。嫁姑ってあり得ないし私は宗崎さんとの結婚なんて考えてないし」
珠希は延々と話し続ける母に向き合い、慌てて話を遮った。
「え、珠希?」
珠希の母は、突然大きな声をあげた珠希に困惑し、目を瞬かせる。
「おい、珠希、今なんて言った?」
珠希の父も、ソファに腰かけた身体を前のめりにし声を荒げている。
「父さん?」
「ふたりの結婚を喜ぶのはわかるが、珠希を見てみろ、顔が真っ赤だぞ。これ以上からかうと料理どころか家にも呼んでもらえないぞ」
「あら、それは困るわ。碧さんが今住んでいるマンションに大好きな俳優さんが住んでるそうなの。偶然に会えないかなって楽しみにしてるのに」
珠希の母は拗ねた口ぶりでそう言って、唇を尖らせる。
「俳優って……いつの間にそんな情報を手に入れたの?」
母の口から碧に関する情報が次々と飛び出し、珠希は目を丸くする。
料理上手なことも、有名俳優が住んでいるようなマンションで暮らしていることも、自分は聞いていない。
今日を限りに会うことはないだろうと考えプライベートに関して踏み込んだ話をしなかったから当然だ。
「ふふっ。碧さんのご両親って、話しやすくていい方達ね。早速連絡先を交換したのよ」
見合いの席で両親たちは当人そっちのけで打ち解けていた。そのときに碧のことが話題にのぼったのだろう。
「碧さんのお母さまもね、看護師として今も現役でバリバリ働いていらっしゃるのよ。仕事を持つ者同士、話が合ったの。親戚づきあいも問題なさそうだし、ホッとしたわ」
「親戚づきあいって、そんな心配は必要ないから――」
「珠希は人見知りしがちだけど、あのお母様なら大丈夫。きっとかわいがってくれるから嫁姑問題の心配は無用よ」
「ちょ、ちょっと待って。嫁姑ってあり得ないし私は宗崎さんとの結婚なんて考えてないし」
珠希は延々と話し続ける母に向き合い、慌てて話を遮った。
「え、珠希?」
珠希の母は、突然大きな声をあげた珠希に困惑し、目を瞬かせる。
「おい、珠希、今なんて言った?」
珠希の父も、ソファに腰かけた身体を前のめりにし声を荒げている。
「父さん?」