冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
「あ、あの、麗奈さん、どうして私がいるって知ってたんですか?」
「普通にあんたがトイレに入った後すぐに私も入ったからよ。そしたらあの女どもが陰口言い始めるから。あんたよく耐えられるわね。あんなに好き放題言われて」
麗奈は手を洗いながら鏡越しに凛子をみた。凛子も麗奈の隣に立ち、ジャーっと水を流す。水の冷たさが凛子の震えを止めてくれた。
「私、悪口は言われ慣れてるんです。昔っから。優ちゃんは昔からモテてたのでやっかみなんて日常茶飯事だったんです。でも……麗奈さんがスカッと言ってくれて凄く嬉しかったし、感動しました」
手を流し、キュッと蛇口を閉める。凛子が顔を上げると麗奈は格好良く前髪を掻き上げ、口元をキュッと上げて笑った。笑った顔は最高級に美人で時が止まったかのように凛子は麗奈に見惚れてしまうほど。
「チンチクリンだけど、あんたのこと嫌いなわけじゃないのよ。あんたも一歩進めるように少しは自分の気持ちを社長に伝えた方が良いんじゃない? 喧嘩したままだとこっちも困るのよ」
「へ……?」
「あと、勘違いしてるみたいだけど、私が好きなのは社長じゃなくて村上さんだから。あの二人は最強に鈍感男の集まりよ」
凛子が我に帰ったときにはすでに麗奈はトイレには居なかった。
「麗奈さんって本当は凄くいい人なんだ……」
嫌な奴だと思っていた人の良いところが発見できて凛子は思わず唇を噛んだ。
「ふふっ、そうだよね。もう同じく社会人になったんだから、自分から一歩踏み出そう」
よし、と鏡に映る自分を見て、凛子は笑った。