Liars or Lovers 〜嘘つき女と嘘つき男〜
彼と初めて来たカフェ、この前と同じテラス席に座る。
彼は私にアイスカフェラテを、自分には抹茶ラテを買ってきたらしい。
彼は「どうぞ」とそれをテーブルに差し出してから、自分も前回と同じ場所に座った。
「今日はホイップクリーム、乗ってないんだ」
何を話したらいいか分からなくて、私はついそう言った。
「あ……うん。今日は、そういうんじゃないから」
そういうの、とはどういうのだろう、と思いながら、アイスカフェラテに口をつける。
秋の虫たちが鳴いているのに、まだ空気はジトっとした夏のようで、私はため息をついた。
雨が降るのかもしれない。
「あ、あの……」
その声に彼の方を見ると、彼はこちらを見ていた。
もしかしたら、ずっと見ていたのかもしれない。
「すみません、でした……」
「何が?」
「この間の、こと……」
「この間の、どれ?」
「全部、です」
「全部?」
「うん。嘘をついていたことも、女の人をバカにしたのも」
「……」
「美羽さんの嫌がることしたのも、泣いたのも……」
不意にあの時の拓都さんの姿が脳裏をよぎって、それからあの夢が思い出されて。
バクバクと、心臓が嫌な音を立てた。
背中がカタンと背もたれに当たって、無意識に身体を引いていたことに気づいた。
「ごめんなさい……」
「泣いたのは、別にいい。でも、それ以外は、嫌だった」
「ですよね、本当に……」
もう一度彼を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
けれど、それに対して私が深く入る筋合いはないと、見てみぬフリをした。
カフェ店内に視線を向ける。楽しそうに、カップルが談笑をしていた。
私たちは、他の人の目にどう映っているのだろう――。
ため息がまた漏れ出しそうになって、慌ててカフェラテに口をつけた。
ここに来たのを後悔しても、今更何の意味もない。
「美羽さん、あの……」
案の定、彼のその声は震えていた。
だから、私は彼の方を向くことができなかった。
「何?」
「俺の母親、不倫して出てったんです。俺が、6歳の頃に」
思わず彼の方を向いてしまった。
彼は目いっぱいに涙を堪えていた。
「俺、見ちゃったんです。母親が、知らない男と抱き合ってるの」
「え……?」
しばらくの沈黙の後、彼はまた口を開いた。
「その時の俺は、まだセックスとか知らなくて。でも、何かいけないものを見ちゃったんだって、本能的に悟って」
彼は、目の前の通りを見つめた。けれど、その瞳は、何も映っていないようで。
虚空を見つめるその瞳を、私はじっと見ていた。
「母親が出てって、俺は合ってたって思って。セックスというものを知って、女ってバカだなあって思って」
彼は視線を落とし、地面を見つめた。
「高校生の頃に、クラスの女子引っ掛けたら、簡単に腰振って。だから、女ってチョロいなあって。ちょっと優しい声かけて、首元にキス落とせば、誰でも俺に腰振るんだって」
自嘲するようにため息を漏らした彼は、今度は空を見上げた。
その瞳が、儚く揺れる。
「大学の女も皆チョロかった。女はみんなバカなんだって、確かめれば確かめるほど、確信に変わった。だから、もっと他の女ともって、年偽ってアプリ登録して、何人の女とヤレっかなって。なのに……」
その時、彼の瞳からホロリと一筋の雫が、頬を伝って流れ落ちた。
彼は私にアイスカフェラテを、自分には抹茶ラテを買ってきたらしい。
彼は「どうぞ」とそれをテーブルに差し出してから、自分も前回と同じ場所に座った。
「今日はホイップクリーム、乗ってないんだ」
何を話したらいいか分からなくて、私はついそう言った。
「あ……うん。今日は、そういうんじゃないから」
そういうの、とはどういうのだろう、と思いながら、アイスカフェラテに口をつける。
秋の虫たちが鳴いているのに、まだ空気はジトっとした夏のようで、私はため息をついた。
雨が降るのかもしれない。
「あ、あの……」
その声に彼の方を見ると、彼はこちらを見ていた。
もしかしたら、ずっと見ていたのかもしれない。
「すみません、でした……」
「何が?」
「この間の、こと……」
「この間の、どれ?」
「全部、です」
「全部?」
「うん。嘘をついていたことも、女の人をバカにしたのも」
「……」
「美羽さんの嫌がることしたのも、泣いたのも……」
不意にあの時の拓都さんの姿が脳裏をよぎって、それからあの夢が思い出されて。
バクバクと、心臓が嫌な音を立てた。
背中がカタンと背もたれに当たって、無意識に身体を引いていたことに気づいた。
「ごめんなさい……」
「泣いたのは、別にいい。でも、それ以外は、嫌だった」
「ですよね、本当に……」
もう一度彼を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
けれど、それに対して私が深く入る筋合いはないと、見てみぬフリをした。
カフェ店内に視線を向ける。楽しそうに、カップルが談笑をしていた。
私たちは、他の人の目にどう映っているのだろう――。
ため息がまた漏れ出しそうになって、慌ててカフェラテに口をつけた。
ここに来たのを後悔しても、今更何の意味もない。
「美羽さん、あの……」
案の定、彼のその声は震えていた。
だから、私は彼の方を向くことができなかった。
「何?」
「俺の母親、不倫して出てったんです。俺が、6歳の頃に」
思わず彼の方を向いてしまった。
彼は目いっぱいに涙を堪えていた。
「俺、見ちゃったんです。母親が、知らない男と抱き合ってるの」
「え……?」
しばらくの沈黙の後、彼はまた口を開いた。
「その時の俺は、まだセックスとか知らなくて。でも、何かいけないものを見ちゃったんだって、本能的に悟って」
彼は、目の前の通りを見つめた。けれど、その瞳は、何も映っていないようで。
虚空を見つめるその瞳を、私はじっと見ていた。
「母親が出てって、俺は合ってたって思って。セックスというものを知って、女ってバカだなあって思って」
彼は視線を落とし、地面を見つめた。
「高校生の頃に、クラスの女子引っ掛けたら、簡単に腰振って。だから、女ってチョロいなあって。ちょっと優しい声かけて、首元にキス落とせば、誰でも俺に腰振るんだって」
自嘲するようにため息を漏らした彼は、今度は空を見上げた。
その瞳が、儚く揺れる。
「大学の女も皆チョロかった。女はみんなバカなんだって、確かめれば確かめるほど、確信に変わった。だから、もっと他の女ともって、年偽ってアプリ登録して、何人の女とヤレっかなって。なのに……」
その時、彼の瞳からホロリと一筋の雫が、頬を伝って流れ落ちた。