誓ったはずの、きみへの愛


「――メリッサ?」

 気がついた時には、メリッサは人が変わってしまったようになっていた。どうにも苛々と落ち着きがなく、周囲の様子に過敏になっているようだった。
 どうしたのかと、何があったのかと問いかけても、彼女は物言いたげな目をしながらも、

「なんでもありませんわ」

 とぎこちなくも薄く微笑んで、口を閉ざしてしまう。
 もともと朗らかな性質でも口数が多いわけでもなかったけど、僕には見せてくれていたやわらかな表情さえかげりをみせた。

 誰よりも近くにいたのに、今もそばにいるというのに、なんだか遠い。
 悩みがあるなら力になりたい、そんな気持ちさえ拒まれているのかと、何も話してくれない彼女に寂しくなる。






「あのっ!」


 とある令嬢に声をかけられたのは、メリッサの変化に戸惑い始めてしばらくした頃だった。
 メリッサをパートナーとして伴い参加した、学生時代の友人のパーティーでのこと。

「メリッサ様のご婚約者のラグラス様でしょうか……!?」

 ミーツ子爵領のエリー・キャンベルと名乗る令嬢は、慌てていたせいで足をもつれさせて倒れ込む。
 受け止めた身体は小さく軽い。年若いと見える彼女はまだ学生ではないだろうか。
 こちらをまっすぐ見つめる青い瞳は涙を堪えるように潤んでいた。

「ご無礼を承知でお願い申し上げます、どうか、どうか助けてください!」

 令嬢は震える声で、挨拶も忘れてしがみついた。
 崩れ落ちそうになる身体を支え、通りかかった給仕に声をかけ会場が用意している休憩室へと促す。令嬢のためにも醜聞になってはと、ドアは締め切らずにおく。

 そうして聞いた話は、到底信じられるものではなかった。
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