【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 当然のように、騎士団長様の馬車の中で足を組んで、席を陣取ってしまったオーナーに、騎士団長様は、少し眉根を寄せて、口の端を歪めた。
 それでも、完全に拒否している雰囲気ではない騎士団長様。
 通常であれば、私なんて知り合いになれるはずもない王国の最高峰に位置する二人はもちろん、お知り合いなのだろう。

「…………はあ、戦場と王宮以外でシルヴァ殿にお会いできるとは、思いませんでした」
「そうだね、俺たち二人は王国の英雄だが、君が光なら僕は闇側だ。同じ場所に立てるはずもない」
「……ご自分のことを、英雄と言いますか」
「君はもうすこし自覚を持った方がいい」
「…………」

 騎士団長様は、その言葉には返答しないまま、私の手を引いて馬車に乗せてくれた。
 私の隣に座った騎士団長様は、斜め向かいになったオーナーに視線を向ける。

「リティリア嬢の安全のために、ご関係を教えていただいても?」
「それは事実だが、もっと素直にならないと、リティリアには気づいてもらえないよ? リティリア嬢と俺の関係が気になると…………おっと」

 カシャンッと、剣が抜ける音が馬車の中に響き渡った。

「……そうだね。野暮というものか」

 諦めたように、両手のひらを上に受けたオーナーは、私と初めて出会った日について、語り始めたのだった。
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