【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「いらっしゃいませ。あの、ありがとうございます」
「ああ……。今日は、いつもより薄暗いな?」
「はい。星空とオーロラがテーマです」
「そうか。美しいな」

 にっこりと笑った騎士団長様が褒めたのは、もちろん店内の星空のことだろう。
 それとも、オーロラのようなワンピースのことだろうか。

 それなのに、単純な私の頬は、赤くなってしまう。
 暗くてよかったわ……。

「こちらにどうぞ」
「……コーヒーを」
「はい!」

 急ぎ、コーヒーを淹れて、もちろん昨日作ったチョコレートトリュフも星の形の小皿にのせて用意する。

「……あれ?」

 そんなに時間はたっていないのに、騎士団長様はうたた寝していた。
 近づいて、そっとコーヒーとチョコレートトリュフを置くと、目を覚ましたのか、淡いグリーンの瞳が私をぼんやりと見つめる。

「お疲れのようですね」
「ああ、夜警明けでな」
「……あれからずっと、お仕事ですか?」

 騎士団長自ら夜警をしなくてはいけないほど、忙しいのだろうか。
 昨日は、そんな忙しい方を巻き込んでしまったのかと、申し訳なくなる。

「……ああ、いろいろあって、な」

 騎士団長様は、ブラックコーヒーを飲んで、ようやく置いてあったチョコレートトリュフに気がついたようだ。

「ありがとう。今日の店内に、ぴったりだな」

 やっぱりパクリと一口でチョコレートを頬張って、騎士団長様が微笑む。

「さて、もう一仕事だ」
「えっ、まだ働くのですか?」
「……ここに寄って、元気が出た。大丈夫だ」

 そう言って、忙しなく去って行く騎士団長様の背中を、心配しながら私は見送った。

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