【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 暗闇かと思ったこの場所。
 けれど、見上げた瞬間、視界に飛び込んでくるのは、降り注ぐような満天の星空だ。
 実際に手を伸ばせば、きらめく星に届いてしまいそうだ。

 そう、これはあの日、疲れ切って現れたオーナーが、星の欠片をこぼしてしまったあの日の店内の元になった景色に違いない。
 腕の中で方向を変えて振り返ると、騎士団長様はいつもの凜々しい姿に戻っていた。

 ほんの少しだけ残念だと思いつつ、口を開く。

「……まるで、星空に手が届きそうですね」
「――実際に届くだろう」

 騎士団長様が、夜空に手を差し伸べて、何かを掴むようなそぶりをする。
 私の目の前に差し出された握りこぶしが、そっと開かれれば、そこには輝く星の欠片が閉じ込められていた。

「ほら、魔力で作り上げられた星だ」
「……あの時みたいですね」

 思い起こされるのは、あの日、カフェ・フローラで騎士団長様が捕まえてくれた星の欠片。
 あの時の再現のようで、ドキリと胸が音を立てる。

「リティリアが望むなら、いつでも……」

 見つめ合っている私たちが、その距離を縮めようとしたとき、二人の間に割り込んだ人影。
 その、私の背と騎士団長様の背のちょうど真ん中くらいの人影が、手を伸ばして星の光を掴む仕草をした。
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