【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「――――!!」

 大好きなその声が、呼んだのはたぶん私の名前だったと思う。

「……大好きです。騎士団長様」

 まるで、夜が明けてくるような、朝焼けみたいな淡い紫の光の中、差し込んでくる光は強くて眩しい。
 薄れゆく意識の中で、思い浮かんだのは、白い雲とリボンと、可愛いお花で埋め尽くされた店内。
 その可愛らしい店の目立たない席で一人、優雅にコーヒーを飲むその姿だ。

「早く、カフェ・フローラで騎士団長様に」

 コーヒーを出してあげたい。
 それに、新作のクッキーも……。

「リティリア!」

 カフェ・フローラで私の名を呼んだのは、思いのほか、優しく可愛らしい笑顔の騎士団長様。
 今はもう、その笑顔が胸が痛くなるほど愛しい。

 もう一度私の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
 それと同時に、愛しているって声も聞こえた気がしたけど、とのんきに考えたあと、私は意識を手放したのだった。
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