【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 騎士団長様は、苦笑いしている。
 初めのうちは、実は可愛いものが好きなのかな、とか、もしかしてデートの下見かな、とか思っていたのだけれど。
 毎日、会うたびに、気になってしまっていた。
 ただのお客様だと、言い聞かせなくては、きっと恋に落ちてしまうくらいに。

 騎士団長様は、微笑んでいる。
 なにか、私も気の利いたことを言わなくては、と焦ってしまう。

「そんなに、頬を染めていると言うことは、完全に相手にされていないわけでもない、のかな?」
「……あの」

 脳内に浮かんだのは、差し出された銀の薔薇だ。
 頬にそっと触れた、騎士団長様の手は冷たい。

「リティリア嬢のために、あの店に通っていたに決まっている」
「あの」
「好きだから。……嫌なら、押しのけてくれないか」

 こちらを見つめて、微笑んだ騎士団長様に、私は言葉を失ったまま、抱きしめられていた。
 その力は、簡単に抜け出せるほど弱いのに、私は、押し返すなんて、とてもできなかった。
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