【受賞・書籍化予定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

出会いと花の妖精


 レースや、リボン、ハート、パステルカラー、それにお菓子の甘い香りであふれた店内。
 乙女系カフェ、フローラは、時には行列ができるほど、人気のお店だ。
 けれど、開店直後の早朝、今はまだお客様の姿もまばらだ。

 今日のテーマは、一番人気でもある花の妖精だ。
 店内は白からピンクの色合い、妖精が好む花々であふれている。

 ピンクの細いストライプのワンピースは、パニエで広がり、裾からは薔薇をモチーフにしたレースが覗いている。白い靴下は太ももまでの丈で、ワンピースとお揃いのレースがチラリとのぞく。

 そんな可愛い服を着ている私は、このお店の中ではごく平凡な容姿だ。

 淡い紫色のまん丸の目が可愛いといわれることもあるけれど、髪の毛と同じ色のそこまで長くはない薄茶色のまつげといい、本当に普通。
 このお店に雇っていただけたのも、趣味を極めたお菓子作りと、没落貴族として領地の経営に役立てようと勉強した経理の能力のおかげだということは、私自身よくわかっているつもり。

「今朝は、めずらしくお客様が少ないわね」

 そうつぶやくと、私は、珍しい南国の花を見つけて、指先でつついてみた。
 触れた花は、少し揺れて、妖精が大好きなお菓子の香りを漂わせた。
 不思議な花。妖精が好むというのは、きっと本当の話なのだろう。
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