たとえば運命の1日があるとすれば
2.午前
うまくいかないときは、アンラッキーが重なるもので。

会社PCのマウスがうまく動かなくなった。

会社備品の、コード付きで真っ黒のゴツいマウス。
かわいくないのでこれといった愛着もない。
ガンガン酷使できるのでそれはそれでいいのかもしれない。
だけど思い通りにならないのはかなりのストレス。

我慢できず、システム部に助けを求めることにした。

内線一覧表を取り出し、電話をかける。
相手はワンコールで出た。

『はい、システム部滝沢です』

落ち着いた若い男性の声。

「秘書室の外山です。お忙しいところ申し訳ありません。パソコンのマウスの調子が悪いんですが、ご担当の方はいらっしゃいますか?」

『私が伺います。どんな具合ですか?』

穏やかだけど頼もしい口調にほっとする。

「えーと、ポインタが飛んだり、真ん中のクルクルするやつ……ホイール?をクルクルしてもスカってなるっていうか……言うことをきいてくれないんです」

我ながらバカっぽい説明。
呆れられたかな。

『今からそちらへ伺って、実際に見せていただいてもよろしいですか?』





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