年下男子
不器用な女
朝のトラブルは一応解決し、通常業務に戻った午後。
午前中にたまった仕事を片付けようと、私は忙しく動き回っていた。

「すみません加山主任」
廊下に出た途端に名前を呼ばれ、振り返る。
「宮田君、どうしたの?」
彼がわざわざ私を呼び止めるなんて珍しい。

「少し、お時間いただけますか?」
「え、私?」
思いきり自分で自分を指さして見せた。

「はい」

宮田君の真剣な表情と硬い声にただならぬ殺気を感じるし、何より部署の違う宮田君と私が話していることですれ違う社員たちの怪しむような視線が痛い。

「わかったわ」
なんとかその場を離れたい私は、そう答えるしかなかった。
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