竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「断ったよ」


 散々迷った挙句、一言、そう答える。


「そっかぁ」


 そう言って逢璃は笑った。何だか泣き出しそうにも見える。


(少しぐらい、自惚れても良いだろうか?)


 俺は逢璃の特別なんだと――――逢璃が俺と同じ気持ちなんじゃないかと、そう思いたくて仕方がない。

 そんなことがあった数日後のこと。人伝に逢璃が他の男に呼び出されたと聞いた。心臓があり得ないぐらいに、ザワザワと騒ぐ。


(もしもそいつが、逢璃の好きな男だったら?)


 そう思うと、怖くて堪らない。
 もしかすると手遅れなのかもしれないが、それでも何もせずにはいられなかった。


(今日、逢璃に告白しよう)


 ようやく決心がついた俺は、気もそぞろに午前の授業を受けた。
 昼休みを迎えると、いつものように、逢璃が俺の元にやってきた。その事実に、俺は少しだけホッとする。

 けれど、心臓は絶えずバクバク鳴り響いていた。どう切り出そうか、場所を移した方が良いのだろうか。授業中からずっと考えていたことを、性懲りもなく逡巡しつつ、俺は逢璃を見つめる。


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