月下の君には秘密です。
小林は紗季に向かって、俺たちの事を説明し出す。
「井上とアッキーと、もう一人『月ちゃん』ていうハーフの男がいてさぁ。昔ッから仲良いんだよね~。」
「ふぅん…」
紗季が半分諦めて、サンドイッチを口に運び出したから、俺も箸を弁当箱に向けた。
「で、中学ん時から俺が見てたところ…、月ちゃんと井上が『いいかんじ』なわけ!」
そう小林が言ったから、
ピタッと俺の箸が止まった。
……ぇ?
なんで小林が知ってんの?
いや、知るはずがない。
俺だって最近知ったのに…。
「へぇ?そうなの?」
何も知らない紗季が俺に聞く。
俺が何も言わずに小林を見ていると、
「そうなの!だからアッキー邪魔者じゃん?従って、紗季ちゃんと花火行~こ~う~よ~ッ!?」
と小林は体を揺らした。
知ってるはずない。
俺があの二人の近くに居すぎて、気が付かなかっただけなのか…?
「…気が…向いたらな…?」
俺は、
そう答えた。
怒るのも忘れて、
ふて腐れるのも忘れて…
「…やっぱ…そう見えるんだ…」
誰にも聞こえない様な小さな声で、俺はそう呟いていた。