月下の君には秘密です。


『すっごい好きなら自分から動くでしょ』

まるで…
自分の事を言われているみたいだ。

すっごい好きでも、
行動に移せない奴はどうしたらいいんだろう…。


「――…っていうわけで!アッキー、花火一緒に行こうッ?」

紗季はそう明るく俺を誘う。


「…いや、えぇと…」

返答に困っていた。
多分、紗季は友達として俺を『気に入っちゃった』だけなんだと思う。

だから、
別に行ってもいいんだけど…、
俺は毎年、幼馴染みの二人とその家族で花火へ行っていた。


「…もぅ。この際、小林くん付きでもいいから~っ。」

煮え切らない態度を取る俺に、紗季は少しふて腐れて俺の返事を急かした。


「…いや。俺、毎年幼馴染みと行ってて…」

「幼馴染みって、こないだ一緒にいた子?井上さんだっけ?今年も約束してんの!?」


「……ぁ、うん。多分?」

ちょっとだけ、嘘だ。
約束らしいものは、してない。

でも、多分俺たちの中では、それが当たり前なんだ。


「…そろそろ『幼馴染み離れ』すりゃいいじゃん、アッキー…」

小林はどうしても紗季と一緒に行きたいのか、不服そうに俺に言った。


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