月下の君には秘密です。


「晃ちゃん!みんな待ってるから早くしてよね!」

そんな言葉を俺に浴びせて、井上は月ちゃんにうまく丸め込まれて、退場。

俺はホッとして、
溜め息を一つ漏らした。


「…なんの話だぁ?昼飯?」

「そう。久々に3家族集まって、あいつん家の庭でバーベキューだってさ。」

月ちゃんは穏やかに笑った。


「…俺、聞いてない。」

「いつもの如く、今朝にでも急に決まったんだろう…?寒い中のバーベキュー…」

「あぁ…」

能天気な母親たちの顔がポンと浮かんで、苦笑いになる。
バーベキューは夏にやるもんだと思う。


「…そろそろ治まったか?」

月ちゃんは俺の下半身を顎で指しながら、ベッドから立ち上がった。


「…ぁ、あぁ。さんきゅ、助かった。さすが月ちゃんだなッ!」

「あのお姫様は全く察してくれないからな。純粋というか無防備というか…」

うんうん、と俺は深く頷きながら、布団から出て身支度をし始めた。

井上に男扱いされていない俺。

例え、
生理現象とはいえ、
寝起きの下半身を見せるわけにはいかない。
絶叫される、酷ければしばらく口もきいてもらえないかも…

超ッ可哀想…、俺。


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