月下の君には秘密です。
うちの母さんは専業主婦。
暇さえあれば俺で遊ぶんだ…。
「…甘い。『手の込んだ物作らせたんだから、補習ちゃんと受けなかったら…分かってるわねッ!?』…って意味、コレ。」
ヒクヒクと俺の顔がひきつる。
あぁ、怖い。
受けます…
ちゃんと受けますよ、母さん。
「…つーか『タコさんウインナー』!大好きな…!?」
ぎゃははは…と小林に大笑いされて、俺はムッとする。
…いいじゃん。
可愛いじゃんッ。
「……たまに可愛いよね、アッキー。普段の無愛想と…スゴいギャップが…」
紗季もそう言いながら笑いそうなのを必死に堪えていて、片手で口を隠していた。
…織部 紗季。
どういう訳か…、
俺の不安とはうって変わって、シメられる気配もなく。
補習が一緒と分かった日から、俺と小林にくっついて回っていた。
気が強く天真爛漫といったかんじで、裾の短いスカートも気にせず行動は大雑把。
何よりも小林と同じテンションを保てるのはスゴイと思う。
華道の家元?
…とかで、家に反発しているのか『織部』と名字で呼ぶと怒られる。
だから仕方なく、
どうしても名前を呼ばなければならない時は、『紗季』と呼ばざるを得ない。