月下の君には秘密です。


うちの母さんは専業主婦。
暇さえあれば俺で遊ぶんだ…。


「…甘い。『手の込んだ物作らせたんだから、補習ちゃんと受けなかったら…分かってるわねッ!?』…って意味、コレ。」

ヒクヒクと俺の顔がひきつる。

あぁ、怖い。
受けます…
ちゃんと受けますよ、母さん。



「…つーか『タコさんウインナー』!大好きな…!?」

ぎゃははは…と小林に大笑いされて、俺はムッとする。

…いいじゃん。
可愛いじゃんッ。


「……たまに可愛いよね、アッキー。普段の無愛想と…スゴいギャップが…」

紗季もそう言いながら笑いそうなのを必死に堪えていて、片手で口を隠していた。



…織部 紗季。

どういう訳か…、
俺の不安とはうって変わって、シメられる気配もなく。

補習が一緒と分かった日から、俺と小林にくっついて回っていた。

気が強く天真爛漫といったかんじで、裾の短いスカートも気にせず行動は大雑把。

何よりも小林と同じテンションを保てるのはスゴイと思う。


華道の家元?
…とかで、家に反発しているのか『織部』と名字で呼ぶと怒られる。

だから仕方なく、
どうしても名前を呼ばなければならない時は、『紗季』と呼ばざるを得ない。


< 99 / 160 >

この作品をシェア

pagetop