月下の君には秘密です。


「…あっ、そうだ。ねぇねぇ、アッキー!ちょっと聞いて~!」

「…は?」

紗季は俺の横でニカッと笑う。
やっぱり紗季の笑顔は苦手。

今まで、井上以外の女子と仲良くなる事は全然なくて。
だから、なのかな…。

どうもペースを掻き回される。
横で当たり前の様に笑顔を向けられる事に、俺はまだ慣れない。


「クリスマスの夜の打ち上げ花火、知ってる?」

「あぁ…。」

知っているも何も、
昔から毎年必ず行ってる。


俺たちの街には、
小さな湖があって。

そこは、毎年この時期になるとイルミネーションでキラキラしているんだけど…
クリスマスイブの夜、
打ち上げ花火が行われている。


「じゃあ、話早いじゃん。花火、一緒に行こうッ!?」

「……はぁッ!?」

俺?と自分を指差して、驚いて紗季を見る。
紗季は『うんうん』と頷いて、俺の返事を待っていた。

…どゆことッ?


「――えぇ~ッ!?ズルイ、俺も行くぅ~!」

そう小林が騒ぎ出して、


「…小林くんは別に一緒に行かなくて良い…」

紗季は迷惑そうに小林を目を細めて睨んだ。


「…ヒドイ、紗季ちゃん。だって、アレでしょ?アッキー誘って、例のテニス部の後輩ちゃん誘って…」


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