僕の愛おしき憑かれた彼女
「俺と砂月は行けます」

砂月が、目をまんまるにして驚いた顔をしている。

「彰、お前な、何言ってんのかわかってんのかよ!」

胸ぐらを、掴まれそうな勢いの駿介の目を、真っ直ぐに俺は見た。

「お前も来いよ。大丈夫だから。藤野も連れてみんなで参加する」

「彰、お前……」

「少しは信じろよ、俺のことも」

駿介は、じっと俺を見つめてから、愛子に訊ねる。

「愛子、いいのかよ?」

「……春宮彰がそう言うなら」

やや違和感のあるやりとりに、大きな口を閉じて見守っていた谷口先輩が、俺たちの話を聞き終わるとニヤリと笑った。

「よくわからんが、とにかくお前らもマネージャーも来るなら問題ないな」

上機嫌で教室を後にした谷口先輩を見送りながら、俺は、手元のぬるくなった苺ミルクを握りしめていることに気づいた。

「……それ、あたし。あと、放課後少しだけ時間ちょうだい」

チャイムが鳴って、俺の席から離れる時に愛子がボソッと、俺にそう言った。
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