虜にさせてみて?
響がお風呂に入っている間、私はソワソワしていた。

起きて待ってればいいのか。それはそれで期待しているみたいじゃない?

とりあえずはテレビを見てようかと思う。(見ているフリをしているだけであって、頭に内容が入る訳がない。)

「何でウロウロしてるんだ?」

「うわあぁっ、いつの間に上がったの?」

「今さっき、な。落ち着かない?」

クスクスと笑う響に心の中を見透かされたようで恥ずかしかった。

「俺、どっちで寝ようかな?」

「え? 一緒に寝ないの?」

咄嗟に出た一言だった。

だって、毎日の様に一緒に寝てるのに、今日だけ別だなんて悲しい。

でも、今日に限っては絶対に予感出来る事があって、その後から考えたら、誘ってるみたいな言い方だったかも?

「だって、お前が嫌がるかと思って……」

「ち、違うのっ!えっと、さっきは緊張してたの。だから、気持ちを落ち着かせてからって……」

しどろもどろで何を言ってるの、私は?

これじゃ、まるで、まるっきり誘ってるみたいじゃない!

「一緒に寝てもいいけど、今日は腕枕やキスだけじゃ嫌なんだけど?」

響はベッドに腰をかけて、私を見ながら話かける。

「そんなの、分かってる。本当は私も嫌だもん」

心臓が破裂しそうな位に鼓動が早くて、それでも響に触れて欲しくて自分から唇を重ねた。

響の答えも決まっていて、抱き寄せられた。

ドクン、ドクンといつもより早く脈が動いているのは同じで、響も緊張してるのかも? なんて勝手に思った。

思えば毎日のように半同棲のような生活をしてたのに、今日やっと初めて身体を重ねた。

お互い、素直に手を絡めて行き着く先は心の繋がり。

甘い蜜を知ってしまった、誰にも邪魔されない二人だけの時間。

想いは夜の戸張に溶けていった。
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