虜にさせてみて?
寮を建築中だった時は、二人で大喜びしていたのに、今は触れられたくないのかもしれない。

何が、美奈をそうさせるんだろう?

「そうだ、旅行どうだった?」

旅行から帰って来て、美奈と会うのが今日が初めて。

まぁ、旅行初日から数えて4日ぶりなんだけど、こんなに会わなかったのは初めてかもしれない。

「旅行でね、響の実のお母さんに会って来たよ。それから、定番かもしれないテーマパークに行ったり楽しかったよ」

「実のお母さんに会ったんだ?」

「うん、響に似た美人なお母さんだったよ。性格も似てるかもしれないね」

「ふうん、そっか。また後で聞かせてね。ドリンクありがとう」

紅茶をカップに注ぎ、熱々のコーヒーの用意も出来ると、美奈は忙しそうにブライダルへと戻った。

いつもなら、もっとキャピキャピ感があった美奈だけれども今日は違う。

行き来している寮とは違う、初のお泊まりデートだから色々聞かれるかと思ってた。

そういえば、曖昧になってしまっていたけれど以前に泣きながら何かを話そうとしていた美奈。

美奈と湊君も旅行に行ったと聞いていたし、『楽しかったよ』と言ってので私は安心しきっていたけれど、二人の間に何かがあったのならば、気付いてあげられなかった私は馬鹿だ。

私の嫌な予感が“確信”に変わったのは、お昼休憩の時だった――

響とラウンジの仕事を交換して、お昼の休憩に入った。

お昼を食べる前に事務所前の掲示板を見て、寮の部屋割りを確認する事にした。

「あれ?」

新しい寮はアパートのように、一人一人の玄関があり、部屋数も増えて新入社員も一人部屋を割り当てられる。

割り当てを見る限り、部屋も余っているのに何故なんだろう?

どうして響と湊君が相部屋なの?

響からもそんな事を聞いてないよ。

この事が、美奈の浮かない表情に関係するとしたならば私はまず、真実を突き止めたい。
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