虜にさせてみて?
湊君は昼間のラウンジが閉まる時間になると、ケーキを下げに来る。

響君とは話が合うらしく、毎日、少し話をしてから仕事に戻るみたい。

(本人達が言うには、サボりではないらしい)

私はラウンジを交代した後に食事を取り、食事の後はレストランのランチ、スタンバイ業務に入る。

その後はレストランの夜の部を手伝い、落ち着き次第のだいたい19時上がり。

響君は昼のラウンジ業務後は、レストランのバーテン業務並びにレストランのサービススタッフの補助。

その後は夜のラウンジなので、全く会わない。

スマホの番号も知らないし、メールアドレスも知らない。

湊君とはいつの間にかに番号交換したらしいね。

「あのあと、響君と何かあったの?」

あったよ、大有りだけれど……。

「何もないよ。美奈は?湊君と仲良しさん?」

自分なりにさりげなく聞いたつもり。

「当ったり前じゃん! じゃなきゃ、人の心配なんてする訳ないよ!」

ごもっとも。良かった、変わらずに幸せそうで。

「でさ、ずっと気になってたんだけど。あれだけガードが固かった、ひよりが会って間もないのに付き合うって……」

いつか美奈には話さなきゃとは思っていた。

響君の事も駿の事も……。美奈だって、おかしく思うよね。

男の子の誘いはことごとく断っていたし。

「やっぱり、顔? 響君はカッコイイもんね。何て言うか、モデルみたいだし!」

美奈は一人で騒ぎながら、『あ、湊には内緒ね』と付け足した。

「う、うん。まぁ、顔とか外見かな?あのね……」

アタシは思い切って話す事にした。

私自身の事を美奈には知っていて欲しいから。
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