虜にさせてみて?
「ひよこ? ひよこだなんて、普通に考えて有り得ないじゃないですか! もう、いーです、水野響サン!」

私は響君の名前を覚えているのに。覚えてもらえないのは悲しい。

「早くしないと先に買い物して帰りますよ?」

響君は悪いと思ったのか、ゆっくり歩いていたけれど、『お前となんか仲良くする気なんてないぞ?』という態度に苛立ちさえ感じていた。

お世話してあげてるのに。

買い物を済ませて後、帰りも会話はなく家路に着いた。

次の日、挨拶周りを終えた響君が私が担当するラウンジに来た。

「水野響さん、今日からよろしくお願いします。アタシのラウンジにようこそ。紅茶は入れた事、ありますか?」

「ないです」

「じゃあ、一から教えます」

響君は不服そうだったけれど、英国式の紅茶の入れ方を教えた。

支配人が紅茶にこっていて、種類も豊富に揃えているし、力を入れている。
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