君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「では……よろしくお願いします」

郁人さんは史乃さんに私を任せ、藤間さんとどこかへ行ってしまった。

いきなり放たれた私はおろおろしてしまう。

人見知りをするほうではないけれど、場違いすぎるからどうしていいのかわからない。

「みちるさん、あちらでなにかいただきながらお話ししましょう」

史乃さんに連れられ、慣れないヒールでぎこちなく歩きながら料理を取りに行った。

習ったばかりのマナー講座の内容を思い出す。

立食形式では、右から左へ順に、流れに沿って料理を取る。お皿やカトラリー、グラスはすべて左手で持つ。

「わたくしたちもご一緒してよろしいかしら?」

料理を取り終えたところに、三人の女性が近づいてきた。

「もちろんですわ」

史乃さんが快く迎え入れ、自己紹介をし合う。みんな両家のご令嬢のようだ。

私は郁人さんの妻だと知られていた。

「みちるさんとおっしゃるのね。失礼だけどご年齢は? ずいぶんお若く見えるのだけど」

早速囲まれて質問された。

「二十一歳です」

「まあ。でしたら学生さんかしら? どちらの大学に通われているの?」

「高卒なので、大学には行っていません」

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