夏色モノクローム
「あ」

 が、すぐに何かを思い出したように、ガバッと里央の顔を見た。

「そういやおまえ、親には連絡したのか? 前に、実家暮らしとか言ってなかったか?」
「え。……あ!」
「台風の日に忽然といなくなったとか、絶対心配させてるだろ!」

 そういえばそうだ。
 落ちるところまで落ちて、熱出してぶったおれて、そのままだ。
 昨日も意識朦朧としたまま、繰り返される携帯のバイブ音が煩くて、通知をオフにした記憶がある。

 色んな意味で汗が噴き出し、里央は慌てて鞄に手を伸ばす。それから携帯を手に取り、通知を確認し――、

「……おびただしい数の、連絡が、きてます」

 死の宣告をした。
 もちろん内容など、読むまでもなく想像できる。

「……」
「……」
「……電話してやった方が、いいんじゃねえかな」
「……ですよね。ええと」

 ごくりと唾を飲み込み、頷く。
 でも、どう説明しようと考える上で、避けられない内容があるわけで。

「彼氏の家に、泊めてもらいましたって。言っていいですか……?」
「あー…………まあ。そう、だな」

 彼は考え込むように両目をぎゅっと閉じ、深く呼吸する。
 そして遠くを見つめたまま、ぽつりと呟いた。

「………………今度、いっぱつ殴られにいくか」
「……うちの両親、ゐなやのもなか、好きですよ」
「じゃ、それも上納しに」
「ふふっ」

 両親はどんな反応をするだろうか。
 ゆるっとした両親だ。なんだかんだ、悪い反応はしない気もする。

 くすくすと笑いながら、里央は携帯の通話ボタンを押した。


Fin.
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