まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
「なぜです? 私がここにサインしなくたって父との契約はもう成立してしまっている。普通なら私に検討する余地なんてないはずなのに」
「ああもちろん。それは君の自由だ」

 一哉さんは余裕の表情で答えてきて、その考えがまるで読めなかった。

 父の会社を助ける条件として私が結婚を迫られるのなら話は分かる。でもその逆だったのはなぜなのだろう。

「あなたが分かりません、天使なのか悪魔なのか。本当は父に何と言って契約を結ばせたんですか」

 彼の自信に満ち溢れた表情にまだ裏があるのではないかと疑う私は、自宅を目の前にしてもまだ動く気に慣れずにいた。

「君のちょっとした知り合いだと言っただけだ。君に借りがあるから助けたいとね」

 するとすんなり白状した彼の口から出た言葉に驚きを隠せずにいた。

 父がこの上手い話を受け入れ契約に判を押した理由がやっとわかった気がする。それに借りがあるなんて言って、まだ何もないうちから私を持ち出すなんてずる過ぎる。

「これで私は父に感謝され後に引けなくなる。先に手を打っておくなんて卑怯なまねを」
「契約なんて所詮ずる賢い方が勝つと相場は決まっている。でも今回に限っては選択するのは君だよ」

 全て彼の思い通りに事は運んでいる。


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