午後2時のカフェオレモーニング
🍃6月28日
平木は朝7時に店に来てテラスでモーニングを食べ、その後書斎に籠った。
昨日と同様に1時ごろ軽いランチを持って書斎に行くと平木はロッキングチェアーに座っていた。
近づくと平木は寝ていたので、そっとランチをサイドテーブルに置いた。
「あっ、寝てた・・・」
「ゴメンね、起こしちゃった。ランチ・・・良かったら食べて。」
「ありがとうございます。あの・・・さっき書き終えて、原稿送りました。」
「あら、よかった。じぁあ今日はもう終わり?」
「まあ今日は・・・でも、あと決まっている仕事4つあるので・・・進めないと・・・」
「そんなに仕事抱えているの?」
「雑誌の連載が月2本、あと長編頼まれているのが2本。締め切りはまだ先だけど・・・」
「凄いのね。」
「ブレッシャーが半端ない。でも軽井沢に来て、朝ここに来るようになってからは少し楽になった気がする。それにこの部屋・・・やっぱ落ち着く。」
「今は新しいところに来たから少し刺激されているけど、また慣れてしまう。自分でメリハリつけてコントロールできるようにならないとね。」
「そんなことできるの?」
「できると思うわよ。旦那はね、長編書き終えると山に登ったり、釣りに行ったり、たまには私を誘って旅に出たりしてた。きっとそういうところに行っても次の小説の構想考えていたんだろうけど、そんなのをルーティンにして自分に言い聞かせて切り替えていたんだろうね。真似してみたら? 」
「・・・特に趣味がないからなー」
「ねえ、明日、お店休むから、一緒に小諸と高峰高原に行かない? 一日仕事休める?」
「えっ? 休めるけど・・・行ってみたいけど、いいの?」
「何が?」
「何がって、店休んだり、俺の付き合いしてくれたり・・・」
「いいのよ。私は好きに生きているんだから、いつ店を休んでもいいの。誰とどこに行ってもいいのよ。」
「ありがとう。」
「じゃあ、明日は朝からずっと私に付き合ってくれる? 6時半に来て。一緒に散歩に行って、その後モーニングを食べて、それから小諸方面に出発しましょう。どう?」
「車は?」
「あるわよ、古いけどね。ルノーの初代カングー。」
「へー、ルノーなの。」
「旦那が好きだったのよルノー。カングーは荷物がいっぱい詰めるから私は好き。もうそろそろ乗り換えなくてはと思っているけど動くからまだ乗ってるの。あなた運転は?」
「出来ますよ。」
「もしかして、元ヤン?」
「まあ、そんなとこかな。」
「だとしたら物足りないね、1400㏄しかないから。」
「フッ、もともと飛ばさないし・・・大丈夫ですよ。」
「良かった。」
「俺、背が高いし、笑わないからそれだけで怖がられて、でも喧嘩はしなかったんだ。もともとヤンキーになるつもりもなかったし。ヤンキーの友達がいたっていうくらい。」
「そう。でもなんで小説家になったの?」
「うーん、親が大学1年の時に二人いっぺんに事故で死んじまった。いきなり独りぼっち。親戚に頼るのもイャだったからそれからバイトして大学通って、遊んでる暇なんかなかった。でもバイト先の居酒屋のオヤジがいい人で飯は食わしてくれるし、自分の本は貸してくれるし、映画のDVDも貸してくれた。それで感想とか聞くから話していたら、お前も書いてみたら・・・なんて言われて・・・調子乗って書いたら、いつの間にか認められた。それもそのオヤジのおかげ。店の常連さんだった編集の人に原稿見てもらうチャンスを作ってくれたから・・・別荘貸してくれたのもこのオヤジ。」
「いい話・・・そのオヤジさんに感謝しなきゃね。」
「たまに顔見せてる・・・」