午後2時のカフェオレモーニング
焼き鳥屋に着いた。
「さてと、何が好き? 塩? たれ?」
「任せますよ。この店のおすすめを・・・」
「そう。では、何飲むの?」
「ビール以外かな。」
「へー。・・・大将、赤シソチューハイ二つと焼き鳥お任せ盛り合わせ。」
「何そのチューハイ?」
「赤シソエキスをチューハイに入れただけよ。あんまり甘くないから大丈夫。アルバイトしていた居酒屋には無かった?」
「無かった。チューハイはあったけどウーロンハイとか普通のだけ。店は生ビールの注文が殆ど。なんだかビールの匂いが今では嫌い。夜の新幹線に乗るとビールの匂いするでしょ、それもイャ。」
「意外と繊細なところもあるのね。」
「・・・どうだろ・・・」
「はい、お待ち!」
「では、乾杯‼」
「ねー、名前知らないんだけど・・・なんて呼べばいい?」
「フフフ、そうよね。どうしようかなぁ~・・・ユリって呼んで。ちなみに旦那はずっとユリちゃんって呼んでたから、それだけはダメ。」
「呼び捨てっていうわけにはいかないから・・・ユリさんでいい?」
「そうね。それであなたのことは何て呼べばいいの? 凌君?」
「知ってたんだ・・・」
「山田さんが話していったわ。」
「おしゃべりだな・・・えーっと、凌はペンネーム、本名は凛空。」
「なんだか凛空の方がペンネームみたい。そっちの方が好きだけど、どうして凌にしたの?」
「凛空という名前は、嫌いじゃないけど母親の名が凛子だった。なんだか母親の名前を一文字貰っているってことに引っかかってね。でも冬の凛とした日に生まれたから付けたと聞いた時は嬉しかったから、どうしようかなって悩んだんだけど、凌は凌ぐという意味で、なんだか切り替えて今までの自分を乗り越えたいというかそんな気持ちで付けた。」
「意外と熱いんだね・・・」
「どうだろ・・・。そうだな・・・ユリさんには凛空と呼んでほしいかな。」
「わかった。では、改めて凛空・・・乾杯。」
「ユリさん、乾杯。・・・美味いねこの赤シソチューハイ。」
「でしょ、焼き鳥もおいしいよ。」
「うーん、美味い。ユリさんといるとおいしいものが食べられる。」
「凛空は今まであまり食に関心なかったでしょ。」
「燃料だったかな・・・」
「もったいない・・・教えてあげる。食は生きていくうえで大切なものだから。それに凛空には五感を大切にして欲しいなー。」
「五感か・・・視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚だよね。」
「そうよ。目・耳・鼻・舌・皮膚から外部からの情報を感じ取るわけよ。いろいろ見たり聞いたり、香りを感じたり、触ったり・・・そして味わう・・・。どう?・・・男女が恋に落ちるのもこの五感でしょ。」
「フッ、エロい。」
「小説家なら五感鍛えないとね。少し手伝ってあげる。だからいい恋もしてね。」
「恋か・・・してこなかった。」
「恋人いないの?」
「・・・高校の時に一方的に先輩から言い寄られて、付き合ったけど俺は好きとかではなかった。だから数ヶ月で別れてもらった。悪いことしたと思ってる。その後、恋どころじゃなくなってしまったから・・・」
「じゃあこれからだね。」
「ユリさんは・・・旦那さんとはどうやって知り合ったの?」
「幼馴染。隣に住んでたの。お互いに兄弟がいなくて、両方の親とも共働きだったから、なんだか気が付いたらずっと一緒にいた。歳は3つ違うんだけど、旦那は私のことを同等に扱ってくれて、とくに一緒に何かをするというよりも同じ空間にいたっていう感じで、居心地がよかった。だから結婚しても関係はそんなに変わらなかった。」
「いいね、楽そう・・・」
「でもね、もうちょっとドキドキする恋をしてみたかったかな。」
「贅沢だね。」
「人はね、欲張りなのよ。」
「そうかも・・・」