俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd
海を見に行ったのだと思った。
馬車の中でも、楽しそうだった。
窓を開けて潮の香りがすると、両手を広げて
大きく呼吸していた。

ロビーに降りると、フロントに居たメルローズに声をかけられた。

「奥様は海を見に行かれたわ
 お迎えに行く時間を聞いているの
 お迎えは貴方に、お任せしていいかしら?」

お前に言われなくても、そうする。

「彼女をひとりで行かせたのか?」

「大丈夫よ、奥様には知られず、私の婚約者が
ついているの」

メルローズの婚約者。
フロントに居た男を思い出した。
あの男がメルローズの婚約者のような気がした。

俺達3人のやり取りを心配そうに見ていた。
ロビーで大きな声を出すメルローズも不自然だった。
彼女はわざとフロントの男に聞こえるように話していたのだろう。

「私、もうすぐ結婚するの
 悩んでて……話を聞いて欲しいのだけど」

「嫌だ」

「えっ?」

「俺は君の家族じゃないし、恋人でもない
 結婚に文句があるなら、親に言え
 婚約者が不満なら、本人にぶつけろ
 俺が聞いても解決しない」

「…」

「俺が話を聞くのは、妻だけだ」
< 15 / 33 >

この作品をシェア

pagetop