俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd

悪魔が天使に…を許さない~クリストファー

「あら、マクファーレン様!
 嬉しいわ、退学するご挨拶をしていなかったのです」

邪な悪魔など想像もしていない、ピュアの権化グレイスはその言葉通り、嬉しそうな声をあげた。


君は知らないだろうけどね、あのドノヴァンって小僧はね、と教えてあげたいのを堪える。
一応、グレイスの友人だ。
彼女が自分の友人を悪し様に言う俺をどう思うか、わからなかったから。


「ぜひ、貴方にもご紹介したいわ。
 マクファーレン様はとても愉快な御方なのです、旦那様」

「うーん……」

グレイスには結婚式の翌日、俺の事は『旦那様』と呼ばないで、と頼んだが、ふたりだけの時以外は
『旦那様と呼ばせてください』と言われて、ふにゃふにゃになった俺だった。


俺の本音は、アイツの紹介なんて要らない、だ。
あの赤毛の悪魔については専門家から報告されている。
あいつはまだ16歳とは思えない程、遊んでいる男だった。

それこそ、貴族のご令嬢から平民の娘、年上から年下まで、アイツのゾーンは広かった。
グレイスに関係しなければ、師匠と教えを請いたい程だ。

だが、図々しくも婚家にまで会いに来るとは。
中等部の頃から目を付けていたグレイスが人妻となったことで、ドノヴァンはますます滾っているのだろう。
(たぎる、って本当にイヤらしい言葉だけど)


だけど、却っていい機会かと思った。
あいつの目の前で、グレイスが俺の事を『旦那様』と言う。
良い、凄く良い!
それを聞いて、ドノヴァン・マクファーレンはどんな表情をするだろうか。
今更どんなにお前が頑張ったって、グレイスは俺の妻なんだ。
それを思い知るにはいい機会だ。

マウントを取りたい男、それが俺クリストファー。
だが、マウント男は自分で気付いていなかった。


俺がいい機会だと思って、その通りだったためしはない。
前回は6年前、留学をしたくなくて、父にグレイスの事を打ち明けて。
気持ち悪い男認定された時だった。
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