俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd
『それではお待ちしています』と俺は先触れの従者に伝える様に返事をした。
これからグレイスとふたりで旅行のプランをまとめて、午後からやって来るドノヴァンにお知らせしてやろう。
俺は余裕でそう考えていた。


すると、返事を出してすぐ!
有り得ない早さで悪魔がウチにやって来た!

想像するに、ドノヴァンは先触れを出した時点でウチの近所までやって来ていたのだろう。
そのままウチの出入りを見張っていて、路上で使者を捕まえて、自分宛の返事を受け取り、直ぐ様やって来たのだ。
この機動力の早さ、マメさが女性の心を掴むコツなのか?
年下だと侮っていたら、足元を掬われてしまう。


確かにあいつからの先触れに応えた俺は、時間を指定しなかった。
だが、普通返事を受け取って10分以内に来る貴族がどこにいるのか?
常識的に考えて、午前に返事を貰ったら、早くても午後から来るもんじゃないのか?
イマドキの若者は皆こうなのか?
もう俺はおじさんなのか?

ドノヴァン本人の来訪を告げに来た家令の顔も少々ひきつっていた。


若者の行動力に付いていけない俺に、ドノヴァンは丁寧に名乗った。
慇懃無礼と言われる態度だ。


そして、悪魔がにっこり笑って言ったのだ。


「お願いです。
 学園の友人を代表して参りました。
 囲い込みなどなさらないで、奥様を復学させてあげてくださいませんか?」

「……」

「同じ世代の友人達と過ごす、掛け替えの無い学園生活を満喫させてあげてください。
 彼女には、その権利がある筈ですよね?」

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